AI活用

AIエージェントに丸投げしないための「未知の見つけ方」|Fable 5記事から考える実務導入の型

「AIエージェントに任せれば、あとは勝手に進む」。そう聞くと便利そうですが、実務ではここが一番危ないところです。AIが止まらず動けるようになるほど、何を知らないまま進んでいるのかが見えにくくなります。

Claude Codeに関わるThariq氏がXで公開した記事「A Field Guide to Fable: Finding Your Unknowns」では、Claude Fable 5のような長い作業を進めるモデルでは、プロンプトの上手さ以上に「未知を見つける力」が成果を左右すると整理されています。この記事では、その考え方を中小企業の業務改善に置き換えて噛み砕きます。

この記事を読むとわかること

  • check_circleAIエージェント導入で「未知」が問題になる理由
  • check_circleKnown Unknowns / Unknown Unknownsを業務でどう見るか
  • check_circle実装前・実装中・実装後に使える確認の型
  • check_circle中小企業がAIに丸投げせず、現実的に使い始める手順

向いている方: AIエージェントを顧客対応、資料作成、社内業務、開発補助に使いたい経営者・担当者。

向かない方: Fable 5のAPI仕様だけを確認したい方、X記事の全文翻訳だけを読みたい方。

「地図」と「現場」は、必ずズレる

元記事の中心にある比喩は、地図と現場です。プロンプト、スキル、文脈、仕様書は「地図」。実際のコード、業務フロー、顧客の例外対応、社内ルールは「現場」。そして、地図と現場の差分が「未知」です。

AIエージェントは、未知にぶつかったときに何らかの判断をします。判断そのものが悪いわけではありません。問題は、その判断が自社の現場感とズレたまま、どんどん先へ進んでしまうことです。

元記事の言葉業務に置き換えると起きやすいズレ
Map依頼文、マニュアル、仕様書書いていない前提が多い
Territory実際の顧客対応、在庫、請求、社内承認例外、慣習、担当者判断がある
UnknownsAIが知らない判断基準勝手に一般論で補完される

たとえば「問い合わせメールを分類して」と頼んだとします。一般的には、購入前相談、クレーム、サポート依頼、営業メールに分ければよさそうです。でも現場では、「このお客様は社長が直接見る」「この表現は強めなので翌朝に返信する」「この商品だけは例外的に電話確認する」といった暗黙知があります。ここが未知です。

未知には4種類ある。厄介なのは「自分では当たり前」なこと

記事では、未知を4つに分けています。業務改善で特に効くのは、Unknown KnownsとUnknown Unknownsです。自分では当たり前すぎて書かないこと、そもそも考えていなかったこと。ここをAIに先回りして見つけてもらいます。

分類意味中小企業の例
Known Knowns分かっていて、指示に書けること営業時間、商品名、返信テンプレート
Known Unknowns分からないと自覚していることどのCRMと連携するか、どこまで自動返信するか
Unknown Knowns当たり前すぎて書いていないこと常連客への言い回し、社内承認の空気感
Unknown Unknowns考慮していなかったこと個人情報の扱い、例外注文、既存システムの制約

lightbulbAI導入は「説明できる業務」からではなく、「説明していない業務」を見つけるところから

マニュアル化されている業務は、意外とAIに渡しやすいです。むしろ難しいのは、ベテラン担当者が無意識にやっている判断です。ここを言語化できると、AI活用だけでなく、人の引き継ぎにも効いてきます。

実装前は、Blind Spot Passで「見えていない穴」を探す

元記事で最初に紹介されているのが、Blind Spot Passです。新しい領域に手を付ける前に、AIへ「自分が見落としている未知の未知を洗い出して」と頼む方法です。

業務改善なら、いきなり「この作業を自動化して」ではなく、「この業務をAI化する前に、見落としそうな制約・例外・確認ポイントを洗い出して」と頼みます。ここ、けっこう大事です。作る前に1時間考えるだけで、あとからの手戻りが減ります。

あなたは業務改善プロジェクトの設計担当です。
以下の業務をAIエージェントに任せる前に、blindspot passをしてください。

対象業務:
{例: 問い合わせメールの一次分類と返信案作成}

前提:
- 私はこの業務の全体像は分かっていますが、AI化の落とし穴は詳しくありません。
- 個人情報、送信ミス、顧客別の例外、社内承認の観点を重視してください。

出力:
1. unknown unknownsの候補
2. 事前に聞くべき質問
3. モックで確認すべき画面・帳票
4. 人が必ず止めるべき操作

ポイントは、「AIに答えを出させる」のではなく、「AIに質問を出させる」ことです。現場の人が答えるべき問いが出てくれば、導入の地図がかなり現実に近づきます。

モック、インタビュー、参照資料で、言葉にできない判断を引き出す

元記事では、HTML artifact、プロトタイプ、インタビュー、参照コードなどを使って未知を減らす方法が紹介されています。業務で言えば、画面、帳票、メール文面、分類ルールを「見て反応できる形」にするということです。

方法使いどころプロンプト例
Brainstorm改善案の幅を見たい安い案から大きい案まで10個出して
Prototype画面やメールを見て判断したい本番連携せず、HTMLモックだけ作って
Interview曖昧な条件を言語化したい判断が変わる質問から一問ずつ聞いて
Reference言葉で説明しにくい基準があるこの既存資料を参考に、同じ粒度で作って

「いい感じにして」と頼むと、AIは一般的な正解へ寄せます。でも、会社ごとの「いい感じ」は違います。だから、先に4案出してもらい、担当者が「これは近い」「これは違う」と反応する。ノンプログラマー目線では、この進め方の方がずっと自然です。

実装中は、判断ログを残す。AIが迷った場所こそ資産になる

計画を作っても、実際に進めると必ずズレます。元記事では、実装中にClaudeへ implementation-notes.md を残させ、計画から外れた判断やエッジケースを記録する方法が紹介されています。

業務自動化でも同じです。「この条件はテンプレートAにした」「このケースは判断できないので人に回した」「このCSVの列名が資料と違った」。こうした小さな判断ログが、次の改善材料になります。

AIに残させたい判断ログ

  • check_circle当初の計画から外れた箇所
  • check_circleAIが保守的に判断した箇所
  • check_circle人の確認へ回した理由
  • check_circle次回のプロンプト・マニュアルに追記すべきこと

i-Styleでは、AI活用の価値は「一回早く終わること」だけではないと見ています。AIが迷った場所を記録し、次回の依頼書や業務マニュアルに戻す。地味ですが、ここが半年後に効いてくる部分です。

実装後は、説明資料とクイズで「人が理解した状態」に戻す

長いAI作業のあと、人間側が置いていかれることがあります。差分は出ている。成果物もある。でも、なぜそうなったか分からない。この状態で本番に入れるのは危険です。

元記事では、実装後にpitch docやexplainerを作り、さらにクイズで理解確認する方法が紹介されています。これは開発だけでなく、社内業務にもそのまま使えます。

成果物目的確認する人
説明資料何が変わるかを全員で揃える担当者、責任者
変更点リスト既存業務への影響を見る現場担当者
理解確認クイズ担当者が運用できるか確認する実際に使う人
停止条件リストAIに任せない範囲を明確にする管理者

AI導入で大事なのは、AIが理解していることではなく、人が運用できることです。説明できない自動化は、トラブル時に止められません。逆に、担当者が「ここはAI、ここは人」と説明できる状態なら、小さく始めても強い仕組みになります。

今日使うなら、まず「未知を洗い出す会議」を15分だけ

最初から大きな自動化を作る必要はありません。おすすめは、1つの業務を選んで、AIに未知を洗い出させる15分のミニ会議です。問い合わせ、見積もり、請求前チェック、社内FAQ、日報整理。対象は小さくて大丈夫です。

15分で試す流れ

  1. AIに任せたい業務を1つだけ選ぶ
  2. 現状の手順を箇条書きで5〜10行書く
  3. AIにblindspot passを依頼する
  4. 出てきた質問に、担当者が答える
  5. 「自動化する前に確認すること」リストを作る

これだけでも、業務の暗黙知がかなり見えてきます。AIエージェントは、作業者としてだけでなく、現場の見えない前提を言語化する相棒として使える。今回の記事から持ち帰りたいのは、まさにこの読み筋です。

よくある質問

AIエージェントに仕事を任せる前に、最初にやるべきことは何ですか?

作業指示を細かく書く前に、AIに未知の洗い出しを依頼することです。業務ルール、例外、判断基準、現場の暗黙知を先に見つけると、手戻りを減らせます。

プロンプトは詳しければ詳しいほどよいですか?

詳しすぎると、途中で方向転換すべき場面でもAIが指示に縛られます。目的、制約、確認ポイントは明確にしつつ、未知を見つけたときの報告方法も決めておくのが現実的です。

中小企業の業務改善では、どの領域から試すのがよいですか?

顧客対応、社内資料、受発注、在庫、経理補助など、例外や確認が多いが小さく切り出せる業務から試すのがおすすめです。まずはモックや説明資料で確認し、本番操作は人が止める設計にします。

まとめ

AIエージェントの性能が上がるほど、「良いプロンプトを書く」だけでは足りなくなります。AIが長く動けるからこそ、どこで迷い、どこで人に戻し、どの判断をログに残すかを設計する必要があります。

i-Styleでは、AI導入を「人を置き換える話」ではなく、現場の暗黙知を言語化し、裏側で仕組みを構築する仕事だと捉えています。AIに丸投げする前に、AIと一緒に未知を見つける。その小さな一歩が、自社サイズの現実解になります。

  • check_circleプロンプトや仕様書は地図であり、実際の業務という現場とは必ずズレます。
  • check_circleUnknown KnownsとUnknown Unknownsを見つけると、AI導入の手戻りを減らせます。
  • check_circle実装前はBlind Spot Pass、実装中は判断ログ、実装後は説明資料と理解確認が有効です。
  • check_circle最初は15分の「未知を洗い出す会議」から始めるのが現実的です。

参考リンク

AI活用を、現場の暗黙知から設計したい方へ

i-Styleでは、AIツールの選定だけでなく、業務の洗い出し、プロンプトの型化、人が確認する線引き、運用ログの設計まで含めて、現実的なAI導入を支援しています。

お問い合わせページへarrow_forward

問い合わせ前に、軽く聞いてみることもできます

「自社の業務なら、どこからAI化するとよいか」など、最初の整理なら、i-Styleサポートデスクbotでも質問できます。

i-Styleサポートデスクbotで聞いてみるarrow_forward