業界動向

制作会社がAI時代に売るべきものは何か|納品型ビジネスから成果をつくる伴走型へ

作る力の価値が消えるのではなく、「何のために作るか」まで引き受けられるかが問われています。

デザイン会社や制作会社の倒産が増えている、という話題がXで広く読まれていました。東京商工リサーチによると、2026年上半期の「デザイン業」倒産は40件。前年同期比166.6%増で、14年ぶりに40件を超えています。

この話は「AIでデザイナーが不要になる」という単純な話に見えがちです。ただ、海外の動きを見ると、もう少し根が深い。IDEOの人員削減、R/GAの独立とAIスタジオ買収、Technicolor周辺の再編は、AIだけでなく、顧客予算、組織コスト、内製化、ツールの民主化が重なった結果として見るほうが自然です。

この記事では、X投稿を入口にしつつ、海外記事・公式発表を確認しながら、制作会社がAI時代に何を売るべきかを中小企業の現場感で整理します。

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この記事を読むとわかること

  • check_circleデザイン業・制作会社の苦境を、AIだけのせいにしない見方
  • check_circleIDEO、R/GA、Technicolor周辺の海外事例から見える構造変化
  • check_circle「納品物を作る」だけの仕事が価格競争になりやすい理由
  • check_circleAI時代に制作会社が売るべき、判断・改善・成果の型

向いている読者: 制作会社・デザイン会社の経営者、Web制作を外注している中小企業、AI時代の内製/外注の線引きを考えたい担当者。

向かない読者: 特定企業の業績評価や投資判断を知りたい方。この記事は業界構造と実務の打ち手に絞ります。

「AIで倒産」ではなく、納品型モデルの弱点が表に出ている

東京商工リサーチの記事は、「AIの広がりも影響」としつつ、倒産増を一つの原因だけで説明していません。デザイン業の倒産は、価格転嫁の難しさ、人手不足、受注環境、顧客側の予算変化なども絡みます。

ここで大事なのは、AIが突然すべてを壊したのではなく、もともと弱かったモデルが速く見えるようになったことです。バナー、簡単なLP、提案資料、SNS画像、コピー案。こうした「指示されたものを作る」仕事は、Figma AIのような支援ツールや生成AIによって、社内でも一定レベルまで作れるようになっています。

見方短い説明現場で起きること
AI単独原因説AIが制作業務を奪った話はわかりやすいが、打ち手が「AIに負けない」だけになる
構造変化として見る内製化、予算、ツール、AI、成果要求が重なった売るものを「制作物」から「判断と改善」へ変えやすい

噛み砕いて言うと: AIは原因というより、値段がつきにくかった仕事をさらに見えやすくした存在です。納品物だけで勝負すると、どうしても「もっと早く、もっと安く」に寄っていきます。

海外でも「大きい会社なら安全」とは言い切れない

Fast Companyは2023年、IDEOがスタッフの約3分の1を削減し、拠点を閉じたと報じました。デザイン思考を象徴するような会社でも、従来型の大型コンサルティング需要がそのまま続くわけではありません。

R/GAは2025年、IPG傘下を離れて経営陣とTruelink Capitalの体制で独立したと発表しています。その後、AI System Design StudioのAdditionを買収しました。これは「制作会社がAIに置き換えられる」というより、AIを前提にしたサービス設計へ組み替える動きとして見るほうが近いです。

Technicolor周辺では、Mikros Animation、The Mill、MPC Advertisingなどの米国オフィス閉鎖や英国でのadministration申請が報じられました。VFXや広告制作のように人手と時間を大量に使う領域ほど、コスト構造の重さが厳しくなります。

事例確認した動き読み取れること
IDEO約3分の1の人員削減と拠点閉鎖報道ブランド力のあるデザイン会社でも、従来型需要は揺らぐ
R/GA独立、AI System Design Studio買収AI前提のサービス設計へ寄せる動き
Technicolor周辺閉鎖・administration・雇用影響の報道制作量と人員で回すモデルは固定費が重くなりやすい

顧客側も、もう「全部外注」ではなくなっている

昔は、デザインツールを使えること自体が強い専門性でした。今は少し違います。Figmaのような共同編集ツール、テンプレート、ノーコード、生成AIによって、顧客企業の中でもラフ案や簡単な改善案を作れる人が増えています。

これは制作会社にとって脅威ですが、同時にチャンスでもあります。顧客が作れるようになったからこそ、「何を作るべきか」「どこを直すと売上や採用に効くのか」「どの数字を見て次を決めるのか」が空きやすくなるからです。

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ここが地味に大きい

顧客がCanvaやFigmaやAIで作れるようになるほど、「作業代行」だけでは差が出にくくなります。逆に、顧客の頭の中にある曖昧な要望を、売れる構成・伝わる導線・検証できる数字に変える力は、より価値が出ます。

制作会社がこれから売るべきものは、成果に近い順で考える

では、制作会社は何を売るべきなのか。i-Styleでは、納品物から少し上流と下流へ広げて考えるのが現実解だと見ています。

上流は、顧客理解、課題の言語化、競合との違い、導線設計。下流は、公開後の数値確認、改善提案、A/Bテスト、SNSや広告との接続です。作ること自体はAIで速くなります。だからこそ、人間側は「正しいものを作る」「作ったあとに良くする」へ寄せる必要があります。

売り物価格競争になりやすさ強くする方向
バナー・LP・資料の制作高いAIで速度を上げ、単体ではなく改善運用に組み込む
要件整理・導線設計顧客の言葉を成果につながる構成へ変える
公開後の改善伴走低め数字を見て、次の打ち手まで提案する
AI活用の制作体制づくり低め顧客が内製できる部分と外注すべき部分を切り分ける

中小企業が制作会社に頼むときも、依頼の出し方を変える

発注側にも変化が必要です。「きれいなLPを作ってください」だけだと、制作会社も納品物で勝負せざるを得ません。AI時代に外注するなら、最初から成果と運用まで含めて相談したほうが、費用の使い方が良くなります。

依頼前に整理したい5つの質問

  • check_circleこの制作物で、問い合わせ・採用・予約・購入のどれを増やしたいのか
  • check_circle公開後に、どの数字を見て良し悪しを判断するのか
  • check_circle自社で更新できる部分と、外部に任せたい部分はどこか
  • check_circleAIで下書きしてよい部分と、人が確認すべき部分はどこか
  • check_circle1回の納品で終えるのか、3か月単位で改善するのか

制作会社側も、発注側も、「作って終わり」から少し離れる。これだけで、同じ制作費でも意味が変わります。

まとめ:作る人から、成果の型をつくる人へ

デザインや制作の仕事はなくなるのではなく、値段がつく場所が変わっています。AIで早く作れるものは、これからも増えます。だからこそ、制作会社は「自分たちが手を動かした時間」ではなく、「顧客が前に進む判断をどれだけ作れたか」で価値を示す必要があります。

  • check_circle倒産・再編の背景は、AIだけでなく内製化、顧客予算、固定費、成果要求の変化が重なっている
  • check_circle納品物だけを売るほど、AIやテンプレートとの価格比較に巻き込まれやすい
  • check_circleこれからの価値は、顧客理解、要件整理、導線設計、公開後の改善に移る
  • check_circle発注側も「何を作るか」だけでなく、「何を良くしたいか」を一緒に渡すと成果に近づく

i-Styleとしても、AI時代の制作支援は「速く作る」だけでは足りないと見ています。裏側で仕組みを構築し、公開後の改善まで見える形にしていく。その地味な部分こそ、半年後に効いてくるはずです。

参考にした情報

AI時代の制作・改善体制を見直したい方へ

i-Styleでは、Web制作、AI活用、業務フローの見直しを、現場で続けられる形に落とし込む支援を行っています。制作物だけでなく、公開後の改善や運用体制まで含めて整理したい場合はご相談ください。

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