業界動向

「SaaS is DEAD」は本当か?
AIエージェント時代に変わる
ソフトウェアの価値

最近、海外のAI界隈で「SaaS is DEAD」という言い方をよく見かけるようになりました。かなり強い言葉ですよね。SaaSに関わる会社からすると、少しドキッとする表現でもあります。

ただ、冷静に見ると、これは「SaaS企業がすべてなくなる」という話ではありません。むしろ本質は、ソフトウェアの価値が、画面や機能ではなく、業務成果に移り始めているということだと見ています。今日はこのテーマを、少し本気で考えてみます。

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この記事を読むとわかること

  • check_circle「SaaS is DEAD」という言葉をどう捉えればよいか
  • check_circleソフトウェアの価値が「機能」から「成果」へ移っている理由
  • check_circleAIエージェント時代に弱くなるSaaS、残るSaaSの違い
  • check_circle中小企業が今から見直すべき業務設計のポイント

この記事の読者フィルター

  • 向き:SaaS導入・AI活用・業務自動化を考えている経営者・担当者
  • 向かない:特定SaaSの株価や投資判断を知りたい方 ── ここでは実務と業務設計の話に絞ります

まず、「SaaSが死ぬ」とは何が死ぬのか

最初に整理したいのは、「SaaS」という言葉がかなり広いことです。クラウドで提供される業務ソフトウェア全般を指すなら、SaaSが明日から消えるとは考えにくいです。企業の会計、顧客管理、予約、販売管理、勤怠、チャット、ドキュメント管理などは、これからも何らかの形で必要です。

一方で、弱くなりそうなSaaS体験はあります。それは、人が何度も画面を開いて、入力し、転記し、確認し、別のツールに移ることを前提にしたソフトウェアです。AIエージェントが業務をまたいで動けるようになると、「その画面を人が操作する意味」は薄くなっていきます。

言葉死にやすいもの残りやすいもの
SaaS人が毎回ログインして手作業するだけのUI信頼できるデータ基盤・権限管理・業務記録
AIエージェントただのチャット回答で終わるもの複数ツールをまたいでタスクを完了する仕組み
業務価値機能数や画面の多さ成果、時間短縮、ミス削減、判断支援
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つまり「SaaS is DEAD」は、SaaS企業の終わりというより、SaaSの使われ方の終わりと読む方が現実的です。

2011年の「Software is eating the world」から、次の段階へ

この話を考えるとき、2011年にMarc Andreessenが書いた「Software is Eating the World」は外せません。この記事では、映画、音楽、小売、金融など、さまざまな産業がソフトウェアによって作り替えられていく流れが語られました。

当時の主役は、ソフトウェアそのものです。業務や産業をオンライン化し、クラウド化し、SaaSとして提供することで、ソフトウェアが世界を飲み込んでいきました。では今は何が起きているのか。i-Styleでは、次の段階は「Software is eating workflows」だと捉えています。

時代中心価値企業が見るべきもの
オンプレ時代導入・保守・所有どのシステムを持つか
SaaS時代クラウドで使える機能どのアプリを契約するか
AIエージェント時代業務をまたいだ成果どの仕事を誰に、どこまで任せるか

MicrosoftとBessemerが示す、エージェント化の流れ

MicrosoftのWork Trend Index 2025では、AIエージェントを“digital colleagues”として捉え、人とエージェントの混成チームで動く「Frontier Firm」という企業像が示されています。同レポートでは、82%のリーダーが今年を戦略・業務を見直す重要な年と答え、81%が今後12〜18か月でAIエージェントを自社のAI戦略に組み込むと回答しています。さらに、24%はすでにAIを組織全体に展開済み、12%はまだパイロット段階とされています。

また、Bessemer Venture PartnersのState of the Cloud 2024では「The Legacy Cloud is dead — long live AI Cloud!」という見出しのもと、AI Cloudの潮流が整理されています。特に「AI agentsの台頭」や「Vertical AIが従来型Vertical SaaSを上回る」という見方は、SaaSの価値が変わっていることを考えるうえで重要です。

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海外ソースから見える共通点

  • check_circleAIは、単体の便利機能から業務フローの中へ入り始めている
  • check_circle人がアプリを操作するだけでなく、AIがタスクを受け持つ方向に進んでいる
  • check_circleソフトウェアの価値が、機能数ではなく業務成果へ寄っている

これから弱くなるSaaS、残るSaaS

では、どんなSaaSが弱くなるのか。ポイントは、AIが代わりに実行できるかどうかです。単にデータを入力する、別ツールへ転記する、決まった条件で通知する、といった作業は、AIエージェントや自動化に置き換わりやすくなります。

一方で、すべてのSaaSが不要になるわけではありません。むしろ、正しいデータを保持する、権限を管理する、履歴を残す、外部システムと連携する、業務上の信頼できる基盤になる。こうした役割を持つSaaSは、AIエージェント時代にも重要です。

弱くなりやすいSaaS残りやすいSaaS
人が毎回画面を開いて入力するだけAIや他システムが使える構造化データを持つ
通知・転記・承認依頼だけが主な価値権限・監査ログ・業務ルールを管理できる
他ツールと分断され、データが閉じているAPIや連携で業務全体の一部になれる
席数課金だけで利用実態と価値がずれる利用量・成果・自動化された処理に価値を置ける

Emaの「Why SaaS is dead and the future is agentic」でも、SaaSのスプロールや席数課金への問題意識、Agentic AIによる成果ベースの価値への移行が語られています。ただしこれは企業ブログとしての主張なので、事実というより、現在の市場で強まっている一つの見方として読むのがよいです。

中小企業は「SaaSを解約する」より、業務を分解する

ここで中小企業がやってはいけないのは、「SaaSは終わりらしいから、今使っているツールをやめよう」と短絡することです。今あるSaaSには、顧客情報、請求情報、予約情報、商談履歴、社内ナレッジなど、会社の大事なデータが入っています。

見るべきなのは、SaaSそのものではなく、その前後にある業務です。誰が入力しているのか。どこで転記しているのか。どの確認が人にしかできないのか。どの通知は自動化できるのか。ここを分解すると、AIエージェントを入れる場所が見えてきます。

業務: 問い合わせ対応
SaaS: フォーム / CRM / メール / チャット
人がやること: 例外判断、感情対応、最終回答確認
AIに任せること: 分類、要約、回答案、過去履歴の参照
残すべき基盤: 顧客データ、対応履歴、権限、監査ログ
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i-Styleでは、SaaSを「使う/やめる」で見るより、SaaS・AI・人の役割分担を設計し直す方が現実的だと見ています。

まとめ

  • check_circle「SaaS is DEAD」は、SaaS企業がすべて消えるという意味で読むと雑になる
  • check_circle変わるのは、人が画面を開いて作業するだけのソフトウェア体験
  • check_circleAIエージェント時代には、ソフトウェアの価値が業務成果へ移っていく
  • check_circle残るSaaSは、データ・権限・履歴・連携の基盤になれるもの
  • check_circle中小企業は、SaaS解約よりも業務分解と役割再設計から始めるのが現実的

SaaSが死ぬかどうかより大事なのは、自社の仕事がどこまで「人が画面を操作する前提」になっているかです。そこを見直せる会社ほど、AIエージェント時代の恩恵を受けやすくなります。ソフトウェアを選ぶ時代から、仕事の流れを設計する時代へ。今回の「SaaS is DEAD」という言葉は、その変化を考えるよい入口だと思います。

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参考ソース