AIエージェントの話になると、「どのモデルが賢いか」「どんなプロンプトを書くか」に目が向きがちです。もちろん、それも大事です。ただ、現場で本当に困るのはその先です。
顧客対応、社内承認、データ更新、記事作成、コード修正。実務には、途中で分岐したり、人の確認を挟んだり、失敗したらやり直したりする場面があります。Google Developers Blogで公開されたADK Go 2.0の記事は、まさにこの「AIをどう安全に流れへ組み込むか」を考える材料になります。
この記事を読むとわかること
- check_circleADK Go 2.0のグラフ型ワークフローが何を解決しようとしているか
- check_circlehuman-in-the-loop、リトライ、状態保存を業務に置き換える考え方
- check_circle中小企業がAIエージェントを丸投げにしないための設計メモ
- check_circle最初に作るならどの業務ループが現実的か
向き:AIで問い合わせ対応、記事作成、社内事務、開発補助を安定運用したい経営者・担当者
向かない:ADK Go 2.0のコード実装だけをすぐ知りたい開発者向けの詳細チュートリアルを求める方
ADK Go 2.0の主役は「賢い返答」ではなく、流れを壊さない設計
Google Developers Blogによると、ADK Go 2.0ではグラフ型ワークフローエンジンが追加されました。ノードとエッジで処理をつなぎ、並列実行、状態の保存、人の確認、再開まで扱える設計です。
噛み砕いて言うと、AIに「いい感じにやって」と頼むのではなく、仕事の流れを地図にする発想です。どこで情報を取るか、どこでAIに判断させるか、どこで人に戻すかを先に決めます。
| ADK Go 2.0の要素 | 記事で確認できること | 業務に置き換えると |
|---|---|---|
| Graph workflow | ノードとエッジで処理を構成する | 仕事を「受付」「分類」「下書き」「承認」の流れに分ける |
| Human-in-the-loop | 途中で人の確認を挟める | 送信・公開・金額変更の前で止める |
| Retry / resilience | 失敗時のリトライを扱う | APIエラーや取得失敗を一度で諦めない |
| State persistence | 状態を保存し、再開できる | 途中で止まったタスクを翌朝から続けられる |
ここが今回の読みどころです。AIエージェントの導入は、モデル選びだけでは安定しません。むしろ、周辺の業務設計がそのまま品質になります。
なぜ「自由に考えるAI」だけでは足りないのか
Googleの「Why we built ADK 2.0」では、標準的な業務プロセスをAIの自由な判断だけに任せると、毎回まったく同じ順序で動くとは限らない、という問題意識が示されています。逆に、従来型のワークフローだけで全例外を作り込むのも重くなります。
つまり、全部をAIに任せるか、全部を人間が固定ルールで書くか、の二択ではありません。決まっている手順はコードやワークフローで固め、曖昧な文章理解や例外判断はAIに渡す。これが現実解です。
中小企業向けに翻訳すると
たとえば問い合わせ対応なら、「問い合わせを読む」はAIに向いています。一方で、「返金する」「契約条件を変える」「顧客へ送信する」は、人の確認を挟むべきです。AIの得意・不得意ではなく、失敗したときの影響で線を引くのが現場感のある設計です。
この線引きがないまま自動化すると、便利さより不安が先に立ちます。逆に線引きが見えると、AIを使える範囲が広がります。
人の承認を「例外」ではなく、最初から流れに入れる
human-in-the-loopは、AIが苦手だから人間が後始末する、という意味ではありません。最初から「ここは人が見る」と決めておく設計です。
ここを曖昧にすると、AIの出力を毎回なんとなく見て、なんとなく判断することになります。業務として続けるなら、承認ポイントを名前付きで置いた方が楽です。
AIに任せる: 顧客メッセージの分類、返信の下書き、参考URLの整理 人が見る: 送信前の文面、金額・契約・納期に関わる内容 自動で進める: 保存、社内メモ作成、次回確認タスクの作成 止める: 顧客送信、削除、公開、請求に関わる操作
i-Styleでは、AI活用を「自動化するか、しないか」だけで見ない方がよいと考えています。半分だけ任せる、途中で止める、承認後に次へ進める。この中間の設計が、半年後に効いてきます。
最初に作るなら、顧客対応や記事作成の小さなグラフから
ADK Go 2.0そのものは開発者向けの話です。ただ、考え方はノンプログラマー目線でも使えます。最初から大きな業務全体を自動化するのではなく、小さなグラフを1つ作るのが現実的です。
おすすめは、材料が残り、確認基準を作りやすく、失敗しても人が止められる仕事です。たとえば顧客返信の下書き、ブログ候補の調査、議事録からのタスク化などです。
| 小さなグラフ例 | AIに任せること | 人が見ること |
|---|---|---|
| 顧客返信下書き | 原文要約、返信案、社内タスク候補 | 送信可否、謝罪・契約・金額の表現 |
| ブログ候補調査 | 公式URL確認、重複チェック、構成案 | 書くテーマの選定、一次情報の追加 |
| 議事録タスク化 | 決定事項とToDo抽出、Asana案作成 | 担当者、期限、顧客へ出す文面 |
まずは1本の線で十分です。受付、分類、下書き、確認、保存。この5つを決めるだけでも、AI活用はかなり安定します。
今日やるなら、まず「止める場所」を1つ決める
AIエージェント運用で最初に決めるべきなのは、どこまで自動で進めるかより、どこで止めるかです。止める場所が決まると、任せられる場所も決まります。
- check_circle顧客へ送信する前に止める
- check_circle金額・契約・納期が出たら人に戻す
- check_circle公開・削除・本番反映の前で承認を挟む
この3つを決めてからAIを入れるだけで、「便利だけど怖い」から「ここまでは任せられる」に変わります。派手さはありませんが、地味に大きい一歩です。
よくある質問
ADK Go 2.0は中小企業がすぐ導入すべきツールですか?
開発者向けの技術なので、すべての会社が直接導入する必要はありません。ただし、分岐、承認、リトライ、状態保存という考え方は、AI業務設計のチェックリストとして使えます。
human-in-the-loopとは何ですか?
AIやシステムだけで進めず、途中で人の確認や承認を挟む設計です。顧客送信、金額変更、公開、削除など、失敗したときの影響が大きい場面で特に重要です。
AIエージェント運用で最初に決めるべきことは何ですか?
まずは、どこまでAIが自動で進めてよいか、どこから人に戻すか、失敗時に何回リトライするかを決めるのが現実的です。小さな下書き業務から始めると設計しやすくなります。
まとめ
- check_circleADK Go 2.0は、AIエージェントをグラフ型ワークフローとして扱う方向を示しています。
- check_circle実務では、AIの賢さだけでなく、分岐・承認・再開・リトライの設計が品質を左右します。
- check_circle中小企業は、顧客返信、記事作成、議事録タスク化など小さな業務ループから始めるのが現実的です。
- check_circle最初に決めるべきなのは、AIに任せる範囲と、人が止める場所です。
AIエージェントは、放っておけば勝手にうまく回るものではありません。だからこそ、裏側で仕組みを構築する価値があります。小さな承認ポイントを1つ置くことが、自社サイズの一歩として、次の自動化につながっていきます。
参考リンク
- 参考: Build reliable multi-agent applications with ADK Go 2.0(Google Developers Blog / 2026年確認)
- 参考: Why we built ADK 2.0(Google Developers Blog / 2026年確認)
- 参考: Agent Development Kit documentation(Google ADK Docs / 2026年確認)
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